
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「ほら。」
「あり…がっ…と……ッ…」
泣きながらそれを受け取る。
「俺、警察呼んでくる。」
「うんっ…」
ユイが出て行くのを見送ると、倒れている空さんが目に入った。
「っ…空さん!!」
急いで服を着て、空さんの元へ駆け寄る。
「大丈夫ですか!!?」
空さんを仰向けにし、顔を覗き込む。
「春架…大丈夫か?」
「…っ…」
自分の方がボロボロなのに、なんで俺のことを…
「俺のこと心配してる場合ですか!? 早く、手当しないと…」
「春架。」
先生を呼んでこようとすると、空さんに腕を掴まれ、止められた。
「大丈夫か?」
「…ッ……」
今まで見たことのない空さんの表情。
「…大丈夫です。 ありがとう…ございます。」
「…よかった。」
お礼を言えば、空さんは安心したように笑った。
「あの…空さん…」
「ん?」
なんでここにいるんですか?
そう聞こうとした時、廊下の方から「カチン」と音がした。
「…?」
不思議に思い、そちらに目をやる。
「っ!!」
廊下には、血のついたナイフを持った木原先輩がいた。
「…ッ…」
「どうした、春架。」
あの血は…誰の?
「春架?」
まさか、ユイを…
「…もう…」
「え?」
あの人は…ユイを殺しかねない。
「もう…俺に構わないで下さい!!」
「………」
本当はこんなこと言いたくない。
「空さんにっ…」
好きです、空さん。
