
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「なんであんたがここにいるんだ?」
顔を上げると、ユイは木原先輩を睨んでいた。
「………」
木原先輩はなにも答えない。
「答えろ。」
こんなに怒っているユイを、今まで一度も見たことがない。
「………」
「「……っ!?」」
こんな状況で、木原先輩は怪しく笑った。
「あんた…」
「桜木様!!!」
ユイが口を開くと同時に、俺の主治医が入ってきた。
「大丈夫ですかっ!!?」
「先生…」
これをチャンスだと思ったのか、木原先輩は先生に向かって声をかけた。
「先生。 小泉君がひどい怪我をしているので、病室に戻ってもよろしいですか?」
声をかけられ、先生は少し驚いたようだ。
「なぜ小泉様がここに…」
「後で看護師をよこしてください。」
先生の質問には答えず、木原先輩は空さんを支えながら立ち上がった。
「じゃあ、よろしくお願いしますね。」
「あっ、はい。」
木原先輩は空さんを支えながら、部屋から出て行ってしまった。
「臣…」
「あぁ。」
境兄ちゃんが一臣さんに声をかけると、一臣さんは頷いた。
「わかってる。」
「……?」
俺にはさっぱりわからないが、二人は互いの考えが分かっているようだ。
「桜木様。」
「ぁ、はい。」
急に声をかけられ、慌てて返事をする。
「申し訳ありませんでした。 まさか、こんなことに…」
先生は深々と頭を下げ、謝罪してきた。
「私が管理を徹底しなかったために、桜木様につらい思いをさせてしまって…」
自分を責めている先生を見て、悲しくなってきた。
