
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「お前か? 俺らの仲間にボコボコにされたのは。」
男たちが、俺から離れていく。
「あの時は左足骨折してたからな。」
「じゃあ、お前の本気を見せてみろよ。」
「……いいぜ。」
あっという間だった。
襲いかかってきた男たちを、空さんはものの数秒で片づけた。
「ぐっ…」
「失せろ。」
空さんの言葉に、男たちは一目散に逃げ出した。
「境!!」
「真依!!」
それと同時に、一臣さんとユイが倉庫に駆け付けた。
「おっ…み…?」
「コウっ!?」
二人は急いで、境兄ちゃんたちの拘束を解いた。
「コウっ…コウ…ッ…」
「大丈夫。 もう大丈夫だから。」
真依ちゃんはユイに抱きつき、涙を流した。
「…臣っ…な…で…ッ…?」
「境が心配だったからに決まってるだろ!!!」
優しく抱き起された境兄ちゃんは、話すのもつらそうだ。
「でも…お、前っ…」
「その話は後で。 早く、病院に行こう。」
まだなにか引っかかるのか、境兄ちゃんは動こうとしない。
「ゃ…だっ…」
「境?」
境兄ちゃんは急に起き上り、一臣さんを突き飛ばした。
「境兄ちゃん!!?」
「俺に触んなッ!!」
一臣さんを拒絶する境兄ちゃんなんて、初めて見た。
「境、動いたら…」
「うるさい!!」
立ち上がり、一臣さんから後ずさる境兄ちゃん。
「俺に…さわ…なっ…他の奴を…ッ…」
「境兄ちゃん!!」
体力の限界がきたのだろう。
境兄ちゃんは膝から崩れ落ちた。
「おっと。」
その体を、いつ来たのか亮さんが受け止めた。
「ったく、無茶しちゃって。」
「亮さん…いつから…」
境兄ちゃんを支えながら、亮さんは口を開いた。
「最初から。」
「…ぇ…?」
最初から…って…
「詳しい話は今度ね。 とりあえず、病院行ってくるから。」
亮さんが出て行くと、それを追うように一臣さん、ユイ、真依ちゃんが出て行った。
