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恋ばか

第29章 ~好きになっちゃいけない人~

あの日から一週間。

特になにもなく、穏やかな日々を過ごしていた。
真依ちゃんも笑って許してくれたし、ユイも真依ちゃんを見て笑ってた。

あの後、病院に担ぎ込まれた境兄ちゃんは相当危なかったらしく、三日間意識不明の重態だった。

意識が戻った後診察した所、全治三か月の大けがということだったそうだ。

その事実を知った時、俺は真っ先に境兄ちゃんに謝った。

泣いて謝る俺を見て、境兄ちゃんは困ったように笑うと、

「お前が幸せならなんでもいいんだよ。」

って言って、微笑んだ。

「あ、そうだ。」

空さんがなにか思い出したように、鞄をあさり始めた。

「すっかり忘れてた。」

「??」

不思議に思いながら見ていると、空さんはパソコンを取り出した。

「悪いな。」

「あっ…!!」

パソコンを開くと、そこには懐かしい顔が。

「兄ちゃんっ!!」

『久しぶり。』

大好きな兄からのテレビ電話だった。

『忘れるなんて、ひどいよ空。』

「悪い悪い。」

苦笑しながら、空さんは謝った。

「兄ちゃん、どうしたの?」

『ん?』

テレビ電話なんて初めてだ。

『春架に聞きたいことがあって。』

「なに?」

俺に聞きたいこと?

『春架は今、幸せ?』

「え?」

いつかの日も、こんなことを聞かれた気がする。

(あぁ…兄ちゃんの病院に行った時だ。)

記憶を失った兄は、同じことを聞いてきた。

あの時は、本心から頷けなかったけど、今は…

「うん、すごい幸せだよ!!」

俺の答えに、兄ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。

「でも…」

『…?』

いくつか、心を痛めることがある。

「真依ちゃんとか、境兄ちゃんを巻き込んじゃったのが…」

俺のせいで、関係のない人を傷つけてしまった。

『そっか…まぁ、境は昔から無駄に丈夫だから平気でしょ。』

「おい、なんだよそれ!!」

兄ちゃんの言葉に、境兄ちゃんが食いつく。

『真依ちゃんも、お前のことを責めたりしないと思うよ。』

「でもっ…」

「あのさ。」

反論しようとすると、亮さんが口を挟んできた。

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