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恋ばか

第33章 ~貴方だけを愛してます~

「春架?」

「俺っ…俺…ッ…」

不思議に思って名前を呼ぶと、春架は大粒の涙を流していた。

「このまま…境兄ちゃんが目を覚まさなかったら、どうしようって…」

「勝手に殺すなよ。」

春架の頭を撫でながらそう言えば、春架はより強く俺に抱きついてきた。

「ごめ…なさい…ッ…ごめん…なさっ…」

「もう泣くなって。」

俺の言葉に、春架は顔を上げた。

「お前が幸せならなんでもいいんだよ。」

「境兄ちゃん…」

そう言って微笑めば、春架は小さく笑った。

「…ありがとう。」

春架が俺から離れて椅子に座ると、その隣に空が腰掛けた。

「体…大丈夫か?」

「まぁ、大丈夫ではないけどな。 このくらい大したことねぇよ。」

空の質問にそう答えると、空はなんとも言えない顔をした。

「あ、俺先生呼んでくるね。」

「あぁ。」

亮が部屋を出て行くと、部屋が静寂に包まれた。

「失礼します。」

しばらくすると、亮が先生を連れて戻ってきた。

「初めまして…ではありませんね。 お久しぶりです、五十嵐様。」

「あ、あなたは…」

確か留架が入院したときの担当医だった…

「小山先生?」

「はい。 五十嵐様の担当医になりました。」

知ってる人なら安心だな。

「ところで五十嵐様。 小原様からお話はお聞きになりましたか?」

「ええ。 大体は。」

全治三か月とかなんとか…

「意識が戻られたので、もう一度精密検査をしても?」

「あ、はい。」

春架と空には、今日は帰ってもらうことにした。

「俺が付き添います。」

亮はそう言って、残ってくれることになった。

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