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恋ばか

第33章 ~貴方だけを愛してます~

『境に謝ろうと思ってさ。』

『は?』

謝るって…なにを?

『春架が迷惑をかけたでしょ? 境にひどい怪我をさせちゃったし…』

『気にすんなよ。 俺が好きでやってたことだしさ。』

そう言い返せば、留架はぎこちなく笑った。

『それと…』

『まだなにかあるのかよ?』

呆れて笑いながら留架の言葉を待つ。

『ありがとう。 境のおかげで春架が幸せそうに笑ってる。』

留架の笑顔を見て、思ったことを素直に尋ねる。

『そんなに嬉しいのかよ?』

『もちろん。 やっと春架を幸せにできたんだもん。』

そうか…昔から、留架の願いは春架の幸せだけだったな。

『木原君はもう大丈夫そう?』

『あぁ。 たぶん、もう春架に手を出してくることはないと思う。』

なんか空に締め上げられたらしいし…

『そうじゃなくてさ…立ち直れそうかって聞いてるんだって。』

『は?』

留架の言葉を理解するのに、少々時間がかかった。

『好きな人を他の人間に取られるのって、すごくつらい事だからさ…』

『………』

一瞬、保健室のことが頭をよぎった。

『木原は空のこと、本当に好きだったからな。』

『うん。』

そうか…木原は留架と春架に空を取られたとき、こんな気持ちだったのか。

『木原君にもいると思うけどね。 彼だけを想って、彼だけのことを好きだと言ってくれる人。』

『……いるといいな。』

留架の言葉に頷きながら、臣のことを考えた。

俺にとって臣は…

『境にもわかるんじゃない?』

『え?』

そういう存在じゃないってこと?

『今の木原君の気持ち。』

『留架…まさか…』

全部知ってるのか…?

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