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恋ばか

第33章 ~貴方だけを愛してます~

『ま、俺はカズのこと信じてるけど。』

『…誰から聞いたんだよ。』

留架は俺の問いには答えず、悲しそうに笑った。

『境の気持ち…わからなくはないよ。 俺も同じような体験したから。』

『…………』

亮が春架を抱いた、あの日のことを言っているのが容易にわかる。

『俺はその現実から逃げ出したけど、境にはそうなってほしくない。』

あの光景を見た留架は、部屋から飛び出し…事故に遭って記憶を失った。

『俺の場合は結構特殊だったけど、結果的にはいろんな人を傷つけることになったし、境達を疑ったりした。』

『それはお前の父親のせいだろ。』

留架の父親が記憶を作り変えてしまったからだ。

留架が俺達を疑ったのは。

『もしあの時…部屋を飛び出さずに亮とちゃんと向き合ってたら、そんなことにはならなかった。』

『今更後悔したってしょうがないだろ?』

俺の言葉を聞いた留架は、「うん。」と頷いた。

『だから、境には俺みたいに後悔してほしくないんだよ。』

『…………』

そういうことか。

『……わかってるよ。 ちゃんと臣と話さないといけないことは。』

『頭ではわかってるけど、気持ちがついて行かないんでしょ?』

ほんと…留架は俺のことよくわかってる。

『ま、落ち着いたらまた連絡して。 カズとのこと根掘り葉掘り聞くから。』

『はいはい。』

留架がそう言ってにっこり笑った後、電話は切れた。

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