
恋ばか
第33章 ~貴方だけを愛してます~
「なぁ、境。」
留架との会話を思い出していたら、空が話しかけてきた。
「ん?」
「黒澤さんはいいのか?」
臣の名前が出て、すぐに質問に答えられなかった。
「あの人、ずっと受付前の椅子に座ってるぞ?」
「え?」
驚いて顔を上げると、亮が頷いているのが目に入った。
「そうそう。 お前が入院してから毎日。 朝早くから遅くまで。」
毎日…俺が入院してから…
「毎日?」
「うん、毎日。 仕事休んで。」
仕事を休んで?
あの真面目な臣が?
「面会終了時間です。」
看護師さんの言葉で、みんなが帰り支度を始めた。
「先生達も困ってるから、早く仲直りしろよ。」
「じゃあな。」
「境兄ちゃん、またね。」
「失礼します。」
みんなが部屋を出て行った後も、空の言葉が頭から離れなかった。
どんなことがあっても…たとえ妹が死んでも、仕事だけは休まなかった臣が、仕事を休んで…
「…俺のために…?」
臣…
そう思ったら、今すぐにでも臣に会いたくなったが、さすがにもう帰ってるだろうと思い、明日の朝会いに行くことにした。
