
恋ばか
第33章 ~貴方だけを愛してます~
「こちらです。」
先生に支えられてるおかげか、体に負担がほとんどかからない。
「先生…」
「はい?」
移動してる間、さっき気になったことを先生に尋ねた。
「なんで臣のこと探してるってわかったんですか?」
「五十嵐様は、あの方とお付き合いしてるのではないですか?」
いきなり図星をつかれ、先生の問いに答えられなかった。
「な…んでそう思うんです?」
「あの日…桜木様が目を覚まされた日、黒澤様と五十嵐様の間にはそんな空気が流れてましたから。 それに…ただの執事でしたら、部屋には入れずに外で待たせておきますよ。」
確かに…
臣以外の執事相手ならそうしてるよな。
「あれ? おかしいな…」
「どうしました?」
急に先生の足が止まったので、不思議に思ってそう尋ねる。
「先ほどまで、あのような方はいらっしゃらなかったのですが…」
「……?」
先生の視線を追うと、臣の姿が。
それに…
「…っ…」
あの時臣と保健室にいた、男子生徒の姿もあった。
「五十嵐様? いかがなされましたか?」
「…なんでもないです。」
病院でも会うほど、仲が良いってことか…
「もう行きましょう。」
「しかし…黒澤様がこちらに向かって来られてますよ?」
視線を戻すと、臣が男子生徒を置いてこちらに走ってくるのが見えた。
「境!!」
「…………」
息を切らせている臣の後ろでとり残された男子生徒を見る。
「会えてよかった…」
「……先生、行きましょう。」
すごく悲しそうな…泣きそうな顔をしていた。
「境!?」
「早く戻ってやれよ。」
病室に戻ろうとすると、腕を掴まれた。
「ちょっと待っ…」
「邪魔して悪かったな。 じゃあな。」
その腕を振りほどき、臣の姿を見ずにそう告げ、再び歩を進める。
