テキストサイズ

恋ばか

第33章 ~貴方だけを愛してます~


「よろしいのですか?」

「…なにがです?」

病室に戻る途中、先生にそう尋ねられた。

「黒澤様ときちんとお話しなさらなくて。」

「…………いいんですよ。」

今臣と話をしても、きっとあいつを傷つけることしか言えない。

「今の俺は、あいつを傷つけることしかできませんから。」

「……そうですか。」

俺の答えに、先生は優しく微笑んだ。

「なんですか?」

「いえ…さすがは桜木様の幼馴染だなと思いまして。」

それはとても暖かいもので…

「どうしてですか?」

とても安心できるものだった。

「なぜ五十嵐様が黒澤様と喧嘩をなさったのか、私にはわかりません。 しかし…あなたを見ている限り、今最も苦しんでいるのはあなただと感じます。」

先生がなにを言おうとしているのか、全然わからない。

「それにも関わらず、あなたは黒澤様のことを一番に考えられるのですね。」

そんなの当たり前だ。

「…当然のことですよ。 だって…」

臣は、俺にとって…

「臣はなによりも大切な存在なんです。 自分なんかよりもね。」

かけがえのない存在なんだ。

「そうですか。」

先生の浮かべた笑顔に、俺は少し疑問を覚えた。

「さ、着きましたよ。」

「ありがとうございます。」

部屋に着き、先生にベッドに寝かしてもらったところで、先ほど疑問に思ったことを尋ねてみた。

「あの…先生にもいらっしゃるんですか?」

「はい?」

急な質問に、先生はなんのことだか分らなかったみたいだ。

「大切な人です。」

先生はしばらく考え込んだ後、口を開いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ