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恋ばか

第33章 ~貴方だけを愛してます~

「ええ、いますよ。」

「どんな人か…聞いてもいいですか?」

先生はベッドの横の椅子に腰かけると、ゆっくりと話してくれた。

「とても素晴らしい人です。 私なんかにはもったいないくらいですよ。」

そう話し始めた先生の顔は、とても穏やかなものだった。

「彼女はいつも笑っていて…人の痛みがわかる、とても心優しい人です。 本人さえ気づかないような長所まで、言い当ててしまうすごい能力の持ち主でして…」

先生の顔を見るだけでわかる。

「先生はその人のことが本当に大切なんですね。」

その人のことを心から大切に思ってるって。

「ええ。 彼女がいなければ、私はここにいないでしょうね。」

「どういうことですか?」

彼女がいなければ?

「私が医者になったのは、彼女を助けるためです。」

「助ける?」

彼女さんは病気かなにかなのか?

「生まれつき心臓が悪いんです。 彼女を助けたくて医者になりましたが…」

「なにか問題でも?」

次の瞬間、先生の顔が曇った。

「いえ…なんでもありません。 お話しても、どうにもならないことですから。」

先生は話をそこで無理矢理終わらせると、顔を上げた時には笑っていた。

「それよりも、五十嵐様のお話を聞かせてください。」

「俺の話ですか?」

彼女のことを話すのがつらいのか、先生は俺のことに話題を切り替えた。

「ええ。 よろしければ、黒澤様とのこともお聞きしたいです。」

「臣のことですか…」

どこから話そうか…

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