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恋ばか

第33章 ~貴方だけを愛してます~


「そういえば、今日も黒澤様がいらっしゃってますよ。」

「…………」

臣に最後に会ったあの日から、もうすぐ二週間…

「俺には関係ありませんよ。」

先生から毎日聞くこのセリフ。

「…………」

毎日、俺は決まったセリフを返す。

「五十嵐様。」

いつもなら、ここで終わるのに…先生は言葉を続けた。

「見ていただきたいものがあります。」

「え?」

先生はそう言って俺を車椅子に座らせると、困惑している俺を無視してどこかに向かい始めた。

「ちょ、先生!!」

「静かに。」

向かった先は、臣がいつもいる受付。

「あそこ…見えますか?」

「…ぇ?」

先生が指さした先には、臣の姿が。

「お…み…」

しかしその姿は、俺の知っている臣ではなかった。

「なんで…」

臣の顔色は悪く、目の下には隈ができ、少し痩せていた。

「毎日朝早くから夜遅くまでここでああしてるせいです。 それに、先日のことでかなりストレスなどが溜まっているはずです。」

「………」

俺のせいで…臣があんな姿に…

「本当に黒澤様のことを想っているなら、ご自分のやるべきことがおわかりですね?」

「………はい。」

臣と話さないと。

ちゃんと…臣の気持ちを聞かないと。

「お一人で歩けますか?」

「大丈夫です。」

車椅子から立ち上がり、少しふらつきながら臣の元へ歩いて行く。

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