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恋ばか

第4章 ~好きな人~

その言葉を聞いた瞬間、体がビクッと震えた。

しかし、境は楽しそうに笑うだけで、話すのを止めようとしない。

「そうだよな、留架? あの日、お前は…」

「やめろっ!!」

境の動きがピタリと止まる。
しかし、境の動きを止めた声は俺のものではなく、亮のものだった。

「それ以上は言うな…」

「…これ以上は、ひど過ぎて聞けないか?」

境は挑戦的な笑みを亮に向ける。

俺は亮の言葉を聞くのが怖くて、耳を塞ぎそうになるが、塞ぐ前に亮が言葉を発した。

「いや…そんな事はないけど…
でも、俺はお前じゃなく、留架の口から直接聞きたい。」

「えっ?」

予想していた言葉とは違う言葉が聞こえて、驚いて亮を見る。

亮は優しい顔でこちらを見ていた。

「…俺の事…嫌いにならないの…?」

「俺は、留架の口から聞いた事しか信じないから…」

「亮…」

…嬉しかった。
こんなに自分を信じてくれて…

嬉しすぎて泣きそうになったから、亮に抱きついて、泣くのをこらえる。

亮も抱きしめ返してくれて…

それが嬉しくて、亮の制服を掴む力を強くする。

亮を離したくない…って本気で思った。

俺を抱きしめたまま、亮は境と向き直る。

「お前の事はいろいろと、調べさせてもらったよ。五十嵐。
親父が元ヤクザで、今は大手企業の社長。
しかも、裏ではかなり酷い事をやってるそうだな?」

「っ!! どうして…そこまで…」

境は驚きに目を見張る。

「元ヤクザの親の血を引いてるから、キレると後先考えられなくなる。
違うか?」

「……」

「自分の感情もコントロールできず、好きな人を傷つけるような奴に、留架は渡さないよ。」

「っ…!!」

境は膝から崩れ落ちた。
すると、体が浮く感覚がした。

「っ!? ちょっ、亮!?」

亮は俺を抱き上げて、歩き出した。

保健室から出る時、亮は最後にこう告げた。

「五十嵐…お前は留架を傷つけ過ぎた。 だから、俺はお前を許さない。」

そう言って、俺を抱き上げたまま保健室から出た。

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