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恋ばか

第5章 ~過去~

「でも…」

「でも?」

「それだけじゃ終わらなかった…」

また、涙が溢れ出そうになった。

「…母さんが死んで、一週間くらい経った日…俺はショックで学校行く気になれなくて、自分の部屋に閉じこもってたんだ。 悲しすぎて涙も出てこなくて、一日中布団の中で自分を責めてた…」

亮の手が俺の頭に置かれる。

優しくて、温かい亮の温もりに思わず泣きそうになった。

「そんな時…父さんが部屋に来て、俺の頭を撫でながら声を掛けてきた。 大きくて温かい父さんの手…安心して涙が溢れそうになった。
でも、父さんの言葉を聞いて、俺は凍りついた。」

『どうしたんだい、杏?』

「杏は…俺の母さんの名前だった。 父さんは…俺と母さんを重ねて見るようになった。」

亮は驚いた顔で俺を見た。

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