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恋ばか

第5章 ~過去~

「朝挨拶するときも、帰って来た時も、父さんは俺を母さんの名前で呼んだ。 そんな生活に耐えられなくなって、おじいちゃんに相談して一人暮らしをさせてもらった。
おじいちゃんになら…父さんも逆らえないから…」

「…生活費とかどうしてるの?」

亮の穏やかな声がふってくる。

「おじいちゃんが送ってくれてる…家事も一通り出来るし…」

「そっか…」

「だけど…」

「ん?」

「家を出て、一人になってわかった…母さんを死なせたのは俺のせい。 それで、父さんもおかしくなった。
すべては俺のせいなんだって…」

この話をするのはすごく嫌だった。
だって、この後に返ってくる言葉は決まってるから…

『お前のせいじゃない』

今まで話をした人はみんなそう言った。

おじいちゃんも執事も、境も…

そう言われるたび、自分のせいだって思わずにはいられなかった。

…でも、返ってきた言葉は予想外のものだった。

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