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恋ばか

第37章 ~お慕い申し上げます~

「こっちの書類も、問題なさそうだね。」

「では、これで失礼します。」

「うん。 なにかあったら呼ぶね。」

留架様に頭を下げ、お部屋を出た。

「おい。」

「!!」

仕事に向かおうと足を進めようとしたら、低い声で呼び止められた。

「ニック様…なにか御用ですか?」

ニック様から声をかけてくるなんて、珍しいですね。

「……お前…あいつのこと好きなの?」

「ぇ……」

突然過ぎて、なにを言われたのかわからなかった。

「だから…リチャードのことが好きなのかって聞いてんの。」

「な…にをおっしゃっているのですか? 私が…リチャード様をお慕いするなど…そんな…私などが…」

一体、なんてお答えすれば…

「好きなんだ。」

「…っ……」

誤魔化せない。

嘘をついても、ニック様には通用しない。

「…その割には…お前、遊ばれてるだけみたいだな。」

「………」

相変わらず、痛いところをついてくる方だ。

「そんなんでいいの?」

「…………」

いいわけがない。

でも…

「…私には…拒否権などありませんから…」

「………」

求められれば、断れない。

「あっそ。」

「…失礼します。」

ニック様に頭を下げ、自室に戻った。

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