テキストサイズ

恋ばか

第37章 ~お慕い申し上げます~

「お茶の用意してくれる? あと、湊さんはリチャードを呼んできてくれるかな?」

「「はい。」」

応接間に着くと留架様の指示で、私はお茶を、小内君はリチャード様を呼びに行った。

「なに? なにご…」

小内君に連れて来られたリチャード様は、父上の姿を見て固まられた。

「さっき、怒鳴り声が聞こえたと思ったけど…やっぱり親父だったんだな。」

「リチャード、座って。」

リチャード様が座られたのを確認して、皆さんにお茶を出した。

「どうぞ。」

「ありがとう。」

お茶を出して、いつものように一方後ろに下がる

「…で、どういうこと? 二人は知り合いなの?」

「あぁ…そうだ。 一年ほど前のことだったかな。 晃一とは向こうで会ったんだ。」

「アメリカで?」

「………はい。」

一年ほど前…仕事でアメリカに行った時、私は彼に出会った。

「どこで? 叔父さんに会うような仕事は、なかったでしょ?」

「………この方にお会いしたのは…偶然だったんです。

私は、ニック様とリチャード様の父上が、ロバートだとは…知りませんでした。

本当に、さっき知ったんです。」

「あぁ…私も、晃一のことは名前しか知らなかった。

まさか、留架君が信頼している執事だったなんて…」

本当に、偶然だった。

もしかしたら、誰でもよかったのかもしれない。

「…この方にお会いしたのは…その…リチャード様と、初めて身体を繋げた日で…

私は、初めての体験に戸惑いを隠せず、どうしていいかわからずに町を放浪していました。

痛む身体と精神を抱えたまま、町をふらついていた時…この方にお会いしたんです。」

町を歩いていたら、前を見ていなかったせいで男性にぶつかってしまった。

それが、ロバートだった。

「一目見た瞬間、私は晃一に惹かれてしまってね。

晃一に声をかけたんだ。」

心配そうに声をかけてきたロバートは、どこかリチャード様を感じさせるものがあった。

今考えてみれば、親子なのだから当然だ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ