恋ばか
第37章 ~お慕い申し上げます~
「もっとご自身に自信を持って下さい。 静香様は、今まで私がお会いした女性の中で、一番お綺麗ですよ。」
「そんなの…嘘…」
この方の悪いところは、ご自身のことを、全然理解していないところだ。
「嘘などではありません。 周りをよくご覧下さい。」
「え?」
顔を伏せていた静香様は、私の言葉に顔を上げると、おずおずと周りを見回した。
「お分かりになられますか? 皆さん、静香様を見て頬を赤らめておいでですよ?」
「そ…んな…」
今にも泣きだしそうな静香様の顎を掴み、優しく上を向かせた。
「さぁ、自信を持って下さい。 絶対に大丈夫です。 あなたのことは、私と小内君が保障しますから。」
私の言葉に、静香様はいつもと同じ、可愛らしい笑みを浮かべられた。
「そろそろ北条様がお見えになられますよ。
いつも通りのあなたでいいんです。
そのままで、十分魅力的なのですから。」
「ふふふ。 相変わらず、お世辞が上手いのね。」
小内君はウエイターと話している。
どうやら、私がしてほしいことが分かっているようだ。
「お世辞などではありませんよ。
さぁ…席に戻りましょう。」
「…三神さん。 近くの席、取っておきました。」
上出来だ。
さすがは小内君。
「ありがとうございます。」
「いえ…」
静香様を席にエスコートすると、ちょうど北条様がご到着なされたのが見えた。
「…っ…」
「大丈夫です。 私も、近くにいますから。」
肩の力が抜けるよう、そっと静香様の肩に手を置く。
「深呼吸をして…いつも通りにしていればいいんですよ。」
「えぇ……ありがとう、三神。」
北条様がこちらに気づく前に、静香様から離れ、小内君が取ってくれたテーブルに座った。
「上手くいきますかね?」
「問題ないでしょう。 私と小内君が選んだ方ですし、それに…」
小内君の調べだと、静香様は北条様が求めている方のはず。