恋ばか
第37章 ~お慕い申し上げます~
「失礼します。 清水静香さん…ですか?」
「あ、はいっ!! そうです!!」
あぁ…言い忘れていましたが、静香様の姓は「清水」。
あまり有名ではないが、れっきとした社長令嬢である。
たしか、琴里という名の姉がいたはず。
「初めまして。 私は、北条征二。 北条グループの次男です。」
「あ、の…よろしくお願いします…」
調べでは、琴里様には恋人がいらっしゃる。
しかも、女性の方。
「こちらこそ。 今日は、わざわざ来ていただいて…ありがとうございます。」
「いえ…そんな…」
ちなみに…北条グループは、そこそこ有名な会社だ。
桜木や小原には及ばないが、その辺にある会社よりははるかに有能。
将来の飛躍も期待されている。
「想像していたよりも可愛らしい方で、驚きましたよ。」
「……可愛らしいだなんて…恥ずかしいです…」
「………」
顔を真っ赤にして、俯いてしまわれた静香様。
予想外の反応に、北条様は驚いたようだ。
「…読みが当たったようですね。」
「……えぇ。」
今まで何十人という女性と食事をしてきたであろう北条様。
今までの女性は、先ほどのように褒めると、澄ました笑みを返してきたことだろう。
だから…静香様の反応は、あの人にとって新鮮なはず。
「随分と恥ずかしがり屋なんですね。」
「す、すみません…」
静香様がこんな態度を取るのは、北条様の前でだけだ。
本当に、この方のことが好きなんだろう。