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恋ばか

第37章 ~お慕い申し上げます~

「まぁ…せっかくですから、なにか頼みましょうか。」

「ぁ…もう…注文してあります。 北条様の好みに合うといいんですが…」

「え?」

静香様が遠慮気味にそう言うと同時に、ウエイターが料理を運んできた。

「これは…」

「…っ…」

出てきたものは、北条様が好んでいるスープ。

「間違ってたら…すみません…」

表向きには、北条様の好みはこのスープではない。

しかし、本音ではこのスープが好きなのだ。

「どうして…」

「…以前…ご招待していただいた食事会で…」

北条グループが開催した食事会。

出てきたものは、もちろん北条様が表向きに好きだと言っているスープ。

しかし、スープを口にした瞬間、一瞬だけ北条様の顔が歪んだのを、静香様は見逃さなかった。

「何故、あのスープを飲んで、顔を歪められたのか…もしかしたら、本当は違うんじゃないか…って…」

そして、ある時のパーティー。

バイキング方式だったそのパーティーで、北条様はたくさんの女性に囲まれながら、あるスープを器によそった。

「そのスープを飲まれた時、北条様は僅かに微笑まれた気がして…本当は、これが好きなのでは…そう思って、今日はこれを頼みました。

私の勝手な勘違いだったら…申し訳ありません…」

「…一度もお話ししたことがないのに…私のことを見ていてくれたのですか?」

「え!? えっと…そのっ…」

ご自分で墓穴を掘られていることに気づいていなかったのか。

「……っ…はい…」

おやおや。

耳まで真っ赤にして、俯いてしまいましたね。

「…ありがとうございます。」

「…ぇ…」

そう言って、北条様が浮かべた笑顔は、本心からのものだった。

こんないい笑顔、浮かべるのか。

そう、思うくらいに。

「さぁ、スープが冷めてしまわないうちに、いただきましょう。」

「ぁ、はい!!」

食事を始めたお二人は、その後、楽しそうに話し出した。

静香様も、緊張が解けたようだ。

いつもの笑顔を浮かべていらっしゃる。

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