恋ばか
第37章 ~お慕い申し上げます~
「もう一つ…教えていただけますか?」
「なんでしょう?」
小内君から、要件を聞いた時から思っていたのだが…
「何故、清水家に連絡なさらなかったのですか?
わざわざ、私共の所を訪ねて来られたのは、一体…」
北条様が清水家に連絡を入れれば、問答無用で教えていただけるだろう。
わざわざ、私達の所を訪ねてくる必要はないはず。
「…あんなことをしてしまって…直接聞く勇気が…その…」
「……なるほど。 わかりました。」
まぁ、確かにそうか。
「しかし、静香様に無断で連絡先をお教えすることは、私共にはできません。」
「…そう…ですよね…」
そろそろ。
到着なされる頃か。
あのホテルから、ここまでそんなに距離はないし。
「ですので…申し訳ありませんが、ご自身でお聞きして下さい。
直接お聞きするのは、大変だとは思いますが…」
「え?」
「失礼します。」
お、ナイスタイミングですね。
「静香様をお連れしました。」
「…え?」
小内君が、静香様を連れて部屋に入って来た。
「し…ずかさん…」
「………」
一度立ち上がり、静香様をソファに座らせた。
「急にお呼び出しして、申し訳ありません。」
「…ううん…大丈夫…」
俯いたまま、顔を上げようとしない静香様。
さすがに、あんなことした後では気まずいか。
「…では、私共はこれで失礼します。 なにかありましたら、お呼び下さい。」
「ぇ、三神…!?」
二人きりにした方が、お話しもしやすいだろう。
そう思い、小内君と一緒に部屋を出た。