恋ばか
第37章 ~お慕い申し上げます~
「三神の面倒を見れるのは湊さんだけだから…秘書になってもらえないかな?」
「………三神さん…」
どう答えを出せばいいのか迷っているのだろう。
小内君は、私に助けを求めてきた。
「…そういうことだそうです。 面倒かもしれませんが、私のことを助けていただいてもいいですか?」
困った顔をしていた小内君は、私の言葉を聞いて表情を明るくした。
「はい。 僕でよければ。」
「やったね。」
「ありがとうございます。」
…なんて言ってるが、留架様は計算できる方だ。
仕事ができる彼を、逃したくないのだろう。
「ってことで、三神と湊さん、よろしくね。」
「「はい。」」
恐ろしい主人だ。
「…お前、本当に話したかったのはそれだろ。」
「へへへ。 バレた?」
温泉旅行に行く話なんて、こんな朝早くにする必要はないだろうしな。
「境が湊さんのこと狙ってるの知ってたからね。 早いうちに手を打っておこうと思ってさ。」
「ちぇっ…こっちの考えはお見通しってわけかよ。」
「そういうこと。」
幼馴染で親友なのに、このお二人は仕事に関して互いに容赦ない。
まぁ…そもそも系列が違いますがね。
桜木は病院。 小原は大手の電気メーカー会社兼全国チェーンを展開している飲食店の経営、その他諸々。
五十嵐は一流ホテル経営。 小泉は金融…
と、それぞれの家でやっていることが大分違う。
だから、深刻な問題には発展しない。
「あ、そうそう。 そういうわけだから、三神も温泉旅行来るよね?」
「はい?」
私が…温泉旅行に…?
「だって、俺の秘書なんだから。 もちろん湊さんも。」
「ぼ、僕もですか?」
何故だろう…嫌な予感しかしないのだが…