恋ばか
第37章 ~お慕い申し上げます~
「うん。 あの二人がいたら、三神ゆっくりできないと思うし。
旅行中、ニックの機嫌がずっと悪くて、あの三人の喧嘩を見続けるのはつらいからさ。」
「「あぁ…なるほど。」」
確かに、旅行中ずっとあの調子では、休暇に行く意味がなさそうだ。
むしろ、疲れて帰ってくる気がする。
「お願いね。 二人とは、また今度ってことで。」
「「承知しました。」」
とは言っても、どうしたものか…
「ったく、話してても拉致があかねぇな………晃一!!」
「は、はい。」
まだ喧嘩なさっていたのか。
結局、私に矛先が向かってくるんだよな…
「お前は誰のものなのか、はっきり言ってやれ。」
「そ、れは…」
もちろん、ニック様のものなのですが…
皆様の前で言えというのですか?
「ニッ…」
「失礼します。」
どうせ言わなければならないのだろう。
そう思って口を開いた瞬間、使用人が部屋に入ってきた。
「ニック様にお電話です。」
「チッ…誰だよ、こんな時に…」
はぁ…なんてタイミングで入って来るんだ…
使用人から電話を受け取り、ニック様に渡そうとした時だった。
『チッてなによ!!? 何ヶ月もほったらかしといて、どういうつもりなわけ!!?』
「「!!」」
先程の使用人が誤ってスピーカーを押してしまったのだろう。
受話器から女性の金切り声が聞こえてきた。
「!? お前っ…」
『「すぐ帰る。」とか言って、私を何ヶ月待たせてると思ってるのよ!! 大した連絡も寄越さないで、彼女である私に対して失礼じゃない!!?』
彼女………?
何ヶ月も…ということは、ニック様が日本に来る前からお付き合いしている方か…
『あんたには愛想が尽きたわ!! もう別れるから!! じゃあねっ!!!』
「「………………」」
女性は言いたいだけ言うと、電話を切ってしまった。
女性って怖いですね。