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恋ばか

第8章 ~親友、そして再会~

「とんでもない事をしてしまった私は、もう境様のそばにいられないと思い、黙って出て行きました。  行く当てのない私を、坊ちゃまのお父様…将一様が拾ってくださいました。
そして、今まで通勤していた私をお屋敷に住まわせてくださいました。 将一様には返しきれない程の大恩があります。」

懐かしそうに、小さく微笑んで語っている。

「少しでも、恩を返したいと申し出ると、将一様は私に言いました。
『ならば、私の息子の面倒を見ろ。 お前になら安心して預けられる。』
そう言って、私に坊ちゃまの面倒を見るように命じたのです。」

次の瞬間、黒澤さんの笑顔が曇った。

「私は坊ちゃまと…将一様を裏切ってしまいました。 もうここにはいられません。
明日の朝には出て行きますので、ご安心ください。 今までお世話になりました。」

そう言って、亮に頭を下げると、部屋から出て行こうとした。

しかし、出て行こうとする黒澤さんの腕を境が掴んだ。

「え?」

「…境?」

黒澤さんが驚いて境の方を振り返る。

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