テキストサイズ

どらくえ3

第1章 旅立ち

「よく来たな、アベルよ。いよいよじゃな。」

王は玉座から立ち上がってアベルを迎えた。


王の間には赤い絨毯が敷かれて、天窓からは柔らかな光が注いでいる。



アリアハンはかつては全ての世界を治めていたという。

各国の発展の中で資源が乏しく、孤立した地形のために競争に取り残されてしまったのだ。

大きな戦争もあった。

しかし、歴代の王は愛知に長けた良王ばかりであった。

だからこそ、長い歴史の中で、たとえ国力が劣ろうとも、他国から一目置かれてきた。

アリアハンの王は民を大切にするのだ。


アベルは王と面識があった。

小さい頃、父オルテガと共に謁見し、食事をしたこともある。

オルテガが魔王退治に旅立った後も、残された母や俺に気を掛けてくれていた。

「アベルよ、たくましくなったな。父の後を追い、魔王退治に旅立つというのはお前の夢だったな」

「アベルよ。世界は今、魔王バラモスの悪行によって悲しみに満ちておる。」

王は、息をついて、目を伏せて続ける。

「そなたの父、勇者オルテガも旅立ってから十年以上経ったが、残念ながら未だ朗報は届かぬ。」

王は一度目を閉じ、開くとアベルの目を真っ直ぐに見て言う。

「だが、希望を捨ててはならぬ。今のそなたはまだまだ未熟。しかし、いつの日か、父と共に魔王バラモスを撃ち破り、世界に平和をもたらしてくれると信じておる。」

―よいか―

王と呼ばれる老人は愛する孫に諭すように言う。



「アベルよ。勇者たれ!」

アベルは王の言葉に胸が熱くなるのを感じた。

「必ず、やり遂げます!」
自然と言葉が出る。

王は頷くと、まだ幼さの残る少年の中に未来の勇者を見て優しく微笑んだのだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ