
秘書のお仕事
第5章 鬱憤の種
もう、間接キスがなんだい
あたしは躊躇うことなく、その少し三日月に欠けたハンバーガーにかぶりついた
『うぐっ…ぅおいしぃ…』
あたしは目をウルウルさせながら、
ハンバーガーを食べた
涼は、まるで野良犬でも扱うようにあたしの頭を撫でた
「よしよし、食え食え」
『うん、うん、食べる〜』
あっという間に、涼の手元にあったハンバーガーはなくなった
『あ〜おいしかった、涼ありがとうっ』
「どういたしまして、何だ千晴は食べ損ねたのか?」
『まぁ…仕事に夢中になってたらついつい』
あたしは人差し指で口の端を拭った
「じゃあ俺と一緒だな、俺もよく昼飯抜かしちまうんだ。だから常に携帯食持ってる」
『へー、でもそれだけじゃお腹空くんじゃ…』
もしやもしや…
『さっきのハンバーガー…涼のお昼ご飯だった…?』
「気にすんなって。昼抜きは馴れてるし」
あたし、馬鹿ーーー!!!
あたしは涼の腕を掴んで、揺すりながら謝った
『ほ、ほんとにごめっ、あたし食べちゃった…涼の大事なお昼飯…!!』
「いいからー、俺は平気だって」
何度も何度も謝るが
何度も何度も笑ってくれる
ほんとに、いいやつ
あたしはポトンと手を落とし、ため息をついた
『…今度、おごらせて』
「え、いいの?」
『うん』
すると涼は、さらにニコ〜ッと笑った
「んじゃ、今度晩飯でもおごってよ」
『うん、任せんしゃい!!』
あたしが意気込んでみせると、
「じゃあ仕事終わったら、1階のロビー集合な」
と言い残し、涼は行ってしまった
もう、仕事に戻るのか…
熱心で
頑張り屋さんなんだな…
『あたしも』
またエレベーターに乗り込み、社長室へ向かった
