
秘書のお仕事
第5章 鬱憤の種
人がやっているのを生で聞くのは初めてだな…
なんて興味津々になって聞き入っているときだった
「だめですよ?」
『ぎゃっ…!!!』
突然耳元で聞こえた声に驚き、あたしは悲鳴を上げそうになった
しかし叫ぶ前に、口を塞がれる
「あれも社交辞令です」
『…!!』
や、山田さん…
あたしが口を覆う手をぽんぽんと叩くと、山田さんは放してくれた
「盗み聞きとは感心しませんねぇ」
『す…すいません…』
「まあ、こちらに」
山田さんにそう言われ、あたしは扉から離れて部屋の隅までついていった
山田さんはクルッと振り返り、遠目に扉を眺めた
「あの女性は、取引先の方です」
『え、愛人じゃないんですか…?』
「まさか。社長なら、愛人とは夜になさいますよ」
そ、そういうもんか…!?
「あれは相手の機嫌を取り、こっちにとって有利に交渉を持込むため、されていることです」
『会社のためって…言うことですか?』
「それは何とも言えませんがね」
おい
「とにかく、相沢さんは自分の仕事に戻ってください
いいですね?」
『は…はい…』
山田さんはニコリと笑うと、「では」と部屋を出て行った
