
秘書のお仕事
第5章 鬱憤の種
「あ?顔赤いぞ」
そう言いながら、社長はあたしの頬を撫でた
大きな手に触れられると、たとえ嫌いであっても大人しくなってしまう
『…なんでさっき、あたしのこと知らない振りしたんですか…?』
「さっき?」
『あたしのこと…女の人に…秘書だってこと…』
「ああ、そのこと…」
社長はちらりと後ろの天井を見上げ、またこっちを向いた
「そりゃまあ、こんな未熟なやつが秘書だなんて、俺の面目が潰れるだろ」
そう言いながらあたしの手を引き、起こしてくれた
言い方には一瞬腹が立ったが、あたしはその手をしっかり掴んで起き上がった
「とりあえず、スケジュールは今日中に立てておけ」
『…はい』
どこか落ち込むあたし
そんなあたしに、社長はキスをしてきた
『あ…///』
なんだろうか
人を弄ぶような素振りを見せないキスに、言葉を失ったんだ
社長はあたしの髪を撫でていて、これがまた、あたしを大人しくさせる薬としてはよく効いた
「人前で、あんまり乱れるなよ」
『は…?』
社長は立ち上がり、自分のデスクの方に戻って行った
人前でって…社長の前でってことですか…?
そうさせたのはあんただろ!!
