
秘書のお仕事
第5章 鬱憤の種
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その日の帰り道、あたしは車を走らせていたわけだが
なんだか胸がそわそわする
『はぁ…』
ハンドルを握りながら、肩を回したりするが
どうもスッキリしない
社長に触られたから?
それなら出勤初日だって触られた
『…』
視界がぼやけていく
いや、視界自体ははっきりとしている
あたしの頭が、ついて行かないのだ
前方の車のライトが
いつも以上に、うっとしいくらい眩しい
『あれか…』
キスされたからか…
あたしは左手で、薄く口角のあがる頬を叩くと
ハンドルを握る力を強めた
『あんな垂らしに…』
のろのろと走る車をすべて抜かしてしまいたかったが
我慢した
