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BL~中編・長編集~

第9章 ~大切なもの~

「あぁ。」

荷物を持つのを手伝ってもらい、吉村の家に向かう。

「お前、引っ越すのにこれしか荷物ないのか?」

「まぁ・・・」

吉村は俺の荷物を運びながらそう聞いてきた。

確かに、少し大きめのリュックサック二つと紙袋一袋分しかないから、少なすぎるかもしれない。

「それは?」

吉村は俺が持っている袋を指差してきた。

「ん? 捨てるもの。」

「ふーん。」

そう答え、途中のゴミ捨て場に袋を置く。

「・・・・」

置いてしばらく、俺は袋から手を離せなかった。

「杉野?」

「・・・なんでもない。 行こうぜ。」

今更何を血迷っているんだか。

もう引き返せないところまで来てしまったのに。

「? あぁ。」

吉村は不思議そうに首を傾げたが、俺はそれを無視して吉村の家に向かった。

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