テキストサイズ

BL~中編・長編集~

第10章 ~番外編①~

「っ…優太…」

こんなのっ…

「ぅ…く…ッ…」

最低じゃん…

「ひっ…」

「優…太…?」

僕が泣いているのに気が付いたのか、海斗の声に焦りが感じられる。

「あ…俺…」

「近藤!!」

扉を蹴破る勢いで入ってきたのは、先生だった。

「大丈夫か!?」

「せんせっ…」

なんでここがわかったのかとか、そんなことはどうでもよかった。

「今解いてやるからな。」

「ぅっ…」

先生は手を縛っていたネクタイを解くと、僕にスーツの上着を羽織らせてくれた。

「松下…お前…」

「ぁ…ッ…」

先生は僕を軽々と抱き上げると、うつむいたままの海斗に声をかけた。

「とにかく、保健室に来い。」

「…………」

授業中だったおかげか、保健室に向かう途中に誰かとすれ違うことはなかった。

「今日は保健室の先生お休みなんだ。」

先生はそう言って、棚の中から湿布を取り出すと、痣のついた僕の手首に貼ってくれた。

「悪いな、このくらいしかできなくて。」

「あ、いえ…ありがとうございます。」

制服を着直し、僕は先生にスーツを返した。

「さっきも言った通り、今日は保健室の先生はいないから好きに使うといい。 放課後になったらまた呼びにくる。」

部屋を出て行くとき、先生は僕にこっそり耳打ちした。

「ちゃんと鍵はかけるように。」

「っ!!」

にんまりと笑って、先生は出て行った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ