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BL~中編・長編集~

第16章 ~Riproduzione~

二年生に上がった時、俺の前に現れたのは雨宮 翠。

とても可愛らしい容姿をしていて、俺は一瞬で夢中になった。

豊の気持ちも考えず・・・俺はあいつと別れ、雨宮と付き合った。

その時の俺は知らなかったんだ。


豊が、俺のために体を張ってくれていたことに━━━・・・


豊が身体を売っていると知った時、俺はあいつと距離を置くようになった。

あいつにも彼氏がいたし、そいつといる時・・・あいつは幸せそうに笑っていたから。

いや・・・・

俺にはそう見えていた。

気づけなかった。

あいつが無理して笑っていたことに。

よく見てればわかる事だったのに。

どうして俺は気づいてやれなかったのか。
そのことを、45年間後悔してきた。



『幸せになれよ。』



それが、あいつの最後の言葉。

あの光景が、たまに頭を過ぎることがある。

夕日に照らされた豊。

今まで見た中で、一番きれいに笑っていた。

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