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BL~中編・長編集~

第20章 ~君は親友~

「遅くなってごめんね。 ちょっと混んでて…」

「大丈夫だよ。 おかげで犬井君とゆっくり話せたからね。 ね? 犬井君。」

「あっ、はい。 そうですね。」

(怖い…か…)

案外、そうかもしれない。

俺は、二人きりの時の安藤も、少しヘタレな安藤も好きだし、先輩後輩として接してくる安藤も好きだ。

俺が告白したら…

俺の好きな安藤の顔が…消えてしまうのではないか…


嫌だった。


別に、安藤に今のまま、ずっと完璧に居てほしい訳ではない。

ただ…

安藤の顔が一つでも消えたら、寂しいんじゃないか…

(なんて…我が儘過ぎるか…)

考えに没頭していると、ポケットに入っていた携帯が鳴り出して、心臓が飛び出るほど驚いた。

「ぅわ!!」

慌ててポケットから携帯を取り上げると、電話を掛けてきていたのは…

「あっ…悠だ…」

「え!? まじで!?」

俺の言葉に真っ先に反応したのは、祐…

「あいつ今、アメリカじゃなかったっけ?」

「知らん。」

ブーブー言っている祐を無視して電話に出る。

「もしもし?」

『もしもし? 智?』

「俺の携帯に掛けてるんだから、俺以外が出るわけねぇだろ?」

『はは… 確かに。』

悠は苦笑すると、本題を話し出した。

『なあ、今暇?』

「はあ? なんで?」

まだブーブー文句を言っている祐を無視し続けながら聞き返すと、悠は明るい声で言葉を続けた。

『今、日本にいるから、お前んち行きたいんだけど… だめ?』

「…は…?」

突然の事に、一瞬、言葉を失う。

『まあ、無理って言っても行くけどさ。 じゃ、そういうわけだから、家に居ろよ? 今から1時間くらいで行くから。』

「はぁ!? ちょっと、待っ…」

言葉を発した時にはもう、通話は切れていて…

俺は諦めて携帯をポケットにしまった。

「悠、なんだって?」

携帯をしまうと、祐が身を乗り出して聞いてきた。

俺はその質問を無視して、祐をからかう。

「お前ってさ… 犬みたいだよな。」

「は?」

俺の言葉に、葛城さんも頷いた。

「うん。 見える。 今は完全に尻尾振ってるよね。」

「なっ!! ひどっ…」

葛城さんの言葉に、祐の尻尾が下がっていくのが見えて…

思わず、吹き出してしまった。

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