BL~中編・長編集~
第20章 ~君は親友~
「智…」
悠は静かに俺の名前を呟くと、ゆっくりと顔を近づけてきた。
「!? ちょっ、やめろよ!!」
慌てて顔を逸らすと、悠は少し眉を寄せた。
「俺とキスするのも嫌なくらい、俺が嫌いか?」
「嫌い…とかじゃ…な、くて…」
言葉を濁せば、悠は耳元で囁いてきた。
「じゃあ、なに?」
「……お、れは……好きな奴としか…キ、キスとかしないからっ…」
真っ赤になりながら少し遠慮がちに言った俺を見て、悠は得意げに笑った。
「大丈夫。 すぐに心も体も俺の虜にしてやるよ。」
「はぁ!? 意味わかんねぇよ!! 放せっ!!」
再び湧き上がってきた恐怖心を理性でねじ伏せ、悠から逃れようと必死に体をよじるが、腕を押さえつけられているため、全く離れられない。
「やめろよっ!!」
「智…」
嫌がる俺を無視して、悠の顔がゆっくりと近づいてくる。
「いっ…いやだぁ…ッ!!」
もうダメだっ…
「ぐっ!!?」
「!?」
諦めかけたその時、鈍い音がしたのと同時に、悠の体が吹っ飛んだ。
驚いて体を起こすと、そこには、悠を締め上げている安藤がいて…
「安藤!? どうして…」
「先輩になにしてんだよ!! 先輩に手ぇ出していいのは俺だけなんだよ!!」
「……!?」
いつものヘタレな安藤からは想像できない姿に驚き、少しの間あっけにとられてしまった。
が、安藤が悠を殴ろうとしているのを見てハッとすると、安藤をなだめようと慌てて抱きついた。
「安藤!! やめろっ!!」
「……先輩…」
安藤は必死に抱きつく俺を見ると、ゆっくりと悠から手を離した。
「先輩…行きましょう。」
「え?」
安藤は驚く俺の腕を掴むと、俺を部屋から引っ張り出した。