なんやかんやでモテる主人公
第2章 ありきたりな彼ら
「南が…何か遠く感じた」
「え?」
私には彼の言っている意味が何1つ分からなかった。
この雰囲気、この場面だと普通
「南が…泣きそうな顔してたから…」
っとか普通あるでしょ。
「…手を伸ばせば届くのに…どうして南は遠くにいるの?」
空くんはそう言うと、私の頬に伝った涙を手で拭いニコッと笑った。
なんて顔して笑ってるのよ。
空くんのあの顔が忘れられなくて
一言も交わさないまま私達はホームを後にした。
ただ皆と過ごしたありきたりな日々が変わっていく。
前に進めていないのは私だけなのかもしれない。
今日はくもりのち雨。
まるで私の心の中みたい。
「空くん。私強くなる。もぉ……ぜっ…たいっ…な…なかないっ……」
留めなく溢れる涙が彼の手を濡らしていく。
「南は変わらなくていいよ」
彼が何て言ったのか分からなかったけれど、私の胸はギュッと何かが温かくなるような気がした。