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第9章 ボンジュール、灰かぶり

【Side: サンドリヨン】

………………顔が、熱い。

義父さん、義兄さん方、俺は病気になったのかもしれません。リトの顔が頭から離れないし、顔だけじゃなくて、体も熱いし、さっきから心臓がうるさいです。


と、とりあえず、これは誰かに症状を聞いた方がいいかも!それでヤバそうな感じだったら、なんとかお金貯めてお医者さんに見てもらわないと………!

「あ、あの!!」

たまたま通りかかった全く知らないお兄さんに、聞いてみることにした。

「リトの顔が頭から離れないし、顔が熱くて、さっきから心臓の音が…ほら、聞こえます!?うるさいくらい鳴ってるんですよ!」

お兄さんは眉を寄せ困惑したまま俺の話を聞いてくれている。ゴロツキのような見た目に反して優しい人なんだな。

「これって何の病気ですかッ!?死に至るヤツですか!!?」

最後の辺りは、ほぼ泣きつくように叫んだ。周りの人達がこちらをチラチラ見てるけど、そんなこと気にしていられない。自分の命に関わることだから、早く治療法をみつけないと!


するとお兄さんは、ははーん、と言いながら、面白そうにニヤリとした。

「それは、恋じゃね?」

「鯉?」

「あのな、恋愛のほうだぞ。お前はそのリトっていうやつが好きなんだろ!」

若いなァ!なんてお兄さんがケラケラ笑いながら去っていく。一方俺は立ち尽くしたまま。

「こい………恋?俺、リトのことが好きになったのか?」

病気じゃなくてよかった、と思う余裕はなかった。だって…だって!


俺の初恋なんだから!!


すると、話を聞いていたらしい、果物屋のおばさんが、

「ホラ、受けとんなさい!頑張りなよ!」

とオレンジを一つくれた。お礼を言う暇もなく、今度は花屋のオヤジさんが、仕立て屋の若女将が、魚屋のおやっさんが。周りの、よく行く知った顔の人達が次々に俺に、頑張れといってにこやかに品物をくれた。

「応援してるぞ!」

「協力するわよ!!」

嬉しくて涙がでそうだった。俺、ここに生まれてよかった!!今とっても幸せだ。

そうだ!帰って義父さんと義兄さん方に報告しないと!!今日は少し豪華なものにしてもらおう!なんか忘れている気がするけどまぁ、いいや!!


父さん母さん、俺は今日、初めて人を好きになりました!

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