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第9章 ボンジュール、灰かぶり

【Side: 璃斗】


店主が待っていましたとばかりに店の奥から一本の剣を持ってきた。その剣のあまりの美しさに、こちらを伺っていた人達も、思わず感嘆を吐いていた。

所々に豪華な装飾がしてあって、尚且つ貴族の剣のようにゴテゴテしていない、まさに騎士が使う、最も厳かで美しい強さを持った剣であるように思われた。

「当店で最も高価なのは、こちらの銀装飾が施された鋼のロングソード、その名も…!」

「それをくれ。」

「「え」」

店主も客も点を目にして……じゃない、目を点にして目の前の大胆すぎるマント姿の男を見た。もちろんその中には私も含まれる。

というか、せめて最後まで言わせてあげて。すごく言いたそうな顔してるし。

「いくらだ。」

「えと、1280000§(ギルカ)ですが……」

ぎ、ギルカ?単位がわかんないから高いのかどうかわからないんだけど…

「おいおい聞いたか!」

「1280000§だってよ!」

「ひゃー、俺たちには手も出せないな。だって…」

家一件建つ値段だぜ。





「ほんとによかったのか?」

「うん。盗まれたりしたら面倒だしね。」


結局、私はそこそこの値段がする普通のロングソードを買った。もちろん、あの銀の装飾つきよりも何倍も安い。


だって家が一件建つような剣を持っていたら、盗みに遭うわ、大事にしすぎて使いづらいわ、手入れが大変だわで、なんだかメリットが少ない気がするし。それだったらこっちの凡庸性のあるヤツの方が使いやすそうと思ったから、こっちにした。

店主や客は、ウィザードが買おうとしたのを私が止めたとき、そこで初めて私が持つのだと知ったらしく、心底驚いていた。そりゃそうだよね、こんな子供が店一番の剣を買うなんて思わないしね。まぁ、買わなかったんだけど。

「次は服を仕立てるぞ。」

剣をさす場所がまだないから、その新品の、鞘にしまわれたロングソードを持ち、ウィザードの後に続いた。

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