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↑逆転↓御斗戯世界

第10章 束の間の休息

【Side: ウィザード】

食後のココアを飲みながら、新聞の続きを読んでいると、向かいの席でマタタビジュース─つまり酒─を飲んでいたフェーレースが顔を赤くして聞いてきた。

「わたしもぉ~、おふろはいって、ヒック、いいかにゃ~?」

「お前はさっさと猫になってそこらへんで寝てろ。」

「ひどぉ~い」


机に突っ伏したままケラケラと笑うフェーレースは、空になったボトルをひっくり返しながら寝息をたて始めた。

「おい寝るな。さっさと猫になって寝床いけ。」

「うは~。」

なんともいえない微妙な返事をして、フェーレースが右手首にある腕輪にキスをした。そうすると、フェーレースの体が光りだし、下に魔方陣ができる。次の瞬間にはもう普通の猫になっていた。

「おやすみゃ~」

のっそりとした足取りで部屋から去ろうとしたフェーレースは、去り際、顔だけこちらに向けて、言った。

「襲っちゃだめにょん?」

「襲わねぇよ…………きっと。」

フェーレースは、一瞬頬をひきつらせてからボソリと呟いた。

「リトの貞操がピンチパンチ…」

捨て台詞を吐いていったフェーレースは部屋から出ていった。

残された俺は考える。もし、三日間、何も食べていないライオンがいるとしよう。そのライオンの前に、かつての親友であったシマウマが来たとしたら、そのライオンは、シマウマを食べないでいることができるだろうか。

否、無理だろ。というか、俺なら無理だ。出てきた瞬間、

『おう!ライオン君、久しぶr

ガブリ。

とまぁ、こんな感じに。つまりはそういうことなんだ。

出会い頭にリトにキスしたのも、今こうして悶々としてるのも、すべては飢えのせい。相手は未成年。相手は未成年………。ほんと、我慢できんのかな俺。

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