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↑逆転↓御斗戯世界

第10章 束の間の休息

【Side: 璃斗】

「えっと次は…」

「おねんねの時間だ。」

「きゃあっ!?」

重たい鉄の扉を引いて部屋を出て、よし次にいこう!と思ったら、目の前にウィザードが待ち構えていた。頭がしっとり濡れているから、今さっきお風呂から出てきたんだとわかる。男の人ってお風呂こんなにも早いものなのかしら。


目の前のウィザードは怒っているようで、ランタンで照らされた顔がそれを示している。

「いやー、ちょっと暇だったから…」

そういうと、ウィザードはため息をひとつして、

「ホラ行くぞ。」

と、さっさと階段の方へ歩いていった。もちろん、ランタンはひとつしかないから、ウィザードがいなくなってここが真っ暗になる前に、私もウィザードの背中に続いた。本当はもっと見たかったのに残念だ。

でも、もっと小言をくらうかと思っていたのに、ウィザードはため息をしただけだった。きっと、ウィザードも大分疲れているに違いない。


私はまだ、こっちの世界に連れてきたウィザードを許した訳ではないけれど、まぁ、色々とお世話になったし………


あれ、そういえば───

ねぇ、なんで私を連れてきたの?他の人じゃだめだったの?


私が最も聞きたかったことが分からずじまいだった。私が倒れる前、森のなかでケンカしたとき、ウィザードは全部教えてやると言ってくれた。

でも結局分かったのは、ほとんどこの世界のことだけだ。教えてくれるとかいって嘘じゃん。

とはいっても、今日はもう疲れてるし、今難しい話をされてもきっと頭に入ってこないはずだから、もういいや。


ウィザードに案内された部屋は、まるで使われた形跡がない、シンプルな部屋だった。机とベッド、あとタンスがあるだけのつまらない部屋だけど、ベッドがあるだけいいとしよう。RPGの冒頭にありがちな、お金がなくて野宿、より大分マシだ。

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