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第10章 束の間の休息

【Side: 璃斗】

朝御飯はとても美味しかった。見た目とは裏腹に。だって、真っ青な色のスープなんて、魔女がつくる典型的な毒入りスープじゃない。あ、相手は魔法使いだった。


でも、半強制的に食べさせられたスープはとてつもなく美味しかった。悔しいけど、勝てる気がしないくらい。

そのスープを目をつぶって食べ、隣にあった緑のパンにも手をのばした。

案の定、とても美味しかった。



「忘れ物、ないよな。と言っても、すぐにとってこれるけど。」

「先生!おやつがありません。バナナを所望します!」

「バナナはおやつに入らん。」


家の入り口にて、二人で持ち物確認という、なんともシュールな絵面ができたんだけど、いよいよ旅の出発である。オラ、ワクワクすっぞ!

私は剣を腰の後ろに、横にして身につけた。スタンダードに腰に携えようとしたんだけど、如何せん歩きにくかったから、こういう形にした。うん、歩きやすい。

「そうだ、これを渡しておく。無駄使いすんじゃねぇぞ。」

「時計?」

ウィザードに渡されたのは、黄銅の懐中時計だった。ふたを開け、中を覗いたら短針と長針は、二つとも12のところで止まっていた。動く気配もない。

「これ、時間間違ってるけど?」

「それは時間を知る道具じゃねぇ。願望を叶える魔法の道具だ。」

「へぇ………ってそれすごくない!?」

ウィザード曰く、その時計に向かって願い事をすると、すぐに叶えてくれるらしい。でも、願い事をすると、長針が一時間づつ動いてしまう。つまり、12回、願い事ができる、ということ。また、願い事が壮大だとそれに合わせて、二時間、三時間と多く消費してしまうんだと。

ちなみに瞬間移動だと、三時間分使うんだって。ほんと、凄い代物ね。


「バナナ下さい。」

そういうや否や、空からバナナが一本降ってきた。それと同時に時計がカチッと動く音もした。

「ほんとにくれた………。」

「おい璃斗、俺の話聞いてたか?」

ウィザードがこめかみに青筋を立てて拳を震わせている。いや、だって本当なのかやってみたくなるじゃん?人間の本能的にしょうがないよね。

「ほら、そんなに怒らないで。半分あげるから。」

「……………。」

「いらないのね。」

「……よこせ。」

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