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↑逆転↓御斗戯世界

第2章 始まりはいつも突然

【Side: 璃斗】

犯人と対峙して、冷や汗が頬を伝った。ここでなにも感じなかったら、それこそ精神科に行くことを勧める。怖すぎて脚がすくむ。

(怖い!はやく、早く逃げなきゃ…殺されるっ!)

だが、足は動けなかった。だからといって竹刀を構えて立ち向かうなんて無理だ。アニメのように都合良く体は動いてくれないんだ、と痛感した。

その時、男が初めて声を発した。

「おう…じ、りと…」

男が呟いた名前に驚きを隠せなかった。だって、殺人鬼の口から出たのは、“翁路璃斗”という聞きあきた恥ずかしい自分の名前だったから。

「まもなく、電車が来ます。白線よりお下がりください。まもなく…」

静かなホーム内にアナウンスの落ち着いた声が響いた。それと共に遠くの方から電車の音が聞こえてきて、電車がもうすぐそこまで来ているのがわかる。

次の群衆が来たら、逃げれる。そう思った。

その時だった。

出口から一人、走ってでてきた人物がいた。その男に、犯人はこちらに意識が向いていて気づいていない。

威王、じゃない…。

かなりの長身でこちらもフードを被っている。首から下がっているコードを見る限り、音楽を聴いているのか。

その男はこちらに気付くと、ニィ、と口端をあげた。

脳内に最悪の想像が広がる。駅の係員でもなく、警察でもないとすれば、仲間、なのか?もしそうだとしたら、完全に終わり、ゲームオーバーだ。チェックメイト、王手。

私は女の子の手を離した。そしてその小さな体を抱き締めた。女の子を安心させるためでもあるが、それよりも、私が恐怖に耐えられなくなったから、という理由の方が強かった。

アニメやマンガの世界なら、ここでかっこいい衣装をきた、異世界からの騎士やらなんやらが来てくれるのに。

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