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↑逆転↓御斗戯世界

第9章 ボンジュール、灰かぶり

【Side: 璃斗】


ウィザードが言うには、私の懐でゴロゴロとしているのは、使い魔、らしい。名前はフェーレース、歳は不明で女の子。ペットだった猫に魔法をかけて使い魔にしたんだと。私の名前を知っていたのは、ウィザードが教えたからで、別に知り合いとかではないらしい。

「おいフェーレース、そろそろ離れろ。」

「やーん、別にいいじゃなーい。」

ていうか、フェーレースさんが作った料理、めちゃくちゃ美味しい。お腹がすいていたから余計に美味しく感じる。現代世界にいったら三ツ星とれるよきっと。

パイの中にイチゴのジャム的なものが入ってて─あくまで的なもの、だけど─ほどよい甘さと酸っぱさがあって、本当にプロのパティシエが作ったものみたい。

それを黙々と食べていると、ウィザードの痛いくらいの視線が突き刺さる。痛いぞコラ。きっと、なんで俺の料理は食わないんだよ、的な視線だと思う。いやそりゃあんな核爆発でも起こしそうな料理食べれないよ。今もなお、机の上に置いてあるんだけどね。


「おいリト。」

「ひょっほまっへ(ちょっと待って)。」

最後の一口を飲み込んで、フェーレースさんがくれたおしぼりで口を拭く。

「で、何?」

「今からお前の身なりを整えるぞ。その格好じゃ浮く。」


そう言われて自分を見ると、聖蘭高校の夏服と紺のハイソックス、茶色のローファーという学校スタイルだ。まぁ、学校帰りにトリップしたから当たり前なんだけど。

でも、たしかにファンタジーの世界でこの格好は浮くよね。私も着替えたい!

「でも、私お金持ってないよ?」

そんな金銭的な心配をしていたら、フェーレースさんがケラケラと愉快そうに笑った。

「そんなもん、このサングラスおじさんに貢いでもらえばいいじゃにゃい。」

そう言われてウィザードの方を向くと、フイッと顔を背けて、初めからそのつもりだ、といい放った。案外いい奴じゃん、とか思ったけど、聖剣エクスカリバーの持ち主である私を拉致してきたんだからそれぐらい当然よね、とも思ったものの、やっぱりお金に関わることだから一応、

「ありがと。」

と言っておいた。

「んもー、おじさん耳真っ赤だおー!」

「黙ってろ………。」

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