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第9章 ボンジュール、灰かぶり

【Side: 璃斗】

マイゴニナリマシタ。


このマント、ありきたりな色合いすぎてすぐ見失っちゃうのよ。そこら辺に似たような人いっぱいいるし。

市場の人に聞いてみても、こんなに沢山人がいちゃ全然わからないって言うし、携帯電話という文明もない。交番もないし、迷子センターも皆無。会うのは絶望的、かしら。

ローファーで歩き回ったせいで脚が痛い。とりあえずどこか座ろう。もう限界だわ。

近くにあった階段に座り込む。久しぶりに座れて、思わずお風呂に浸かるときのような声がでた。周りに人がいなくてよかった。


なんだか、久しぶりに一人きりになって少し寂しいというか、心細いというか…。いや、別にさみしくなんてないわよ!へんてこりんな魔法使いと一緒だとケンカばっかりだし!


……………こんなところでツンデレを発動したって現状はかわらない、か。本音を言う。寂しい、ものすごく心細い。

現代世界ではずっと威王と一緒だったし、でももし、わたしが現代世界に帰れたとしても、時間の流れが違うから、私は全く知らない世界になってるかもしれない。

あー、やだやだ!辛気臭くなっちゃって。私の悪い癖、一度マイナス思考に陥ると、それを引きずって憂鬱になってしまう。もっとシャキっとしないと!!

「ねぇ、君。迷子?」

「へ?」

いつのまにか目の前に男の子が立っていた。私ってば人がいるのに気づかないほど考え事してたのね。

髪は綺麗な蒼色だけど、結構ボサボサで寝癖みたいになってる。目はみかんのようなオレンジ色で、目のなかに線が入っててなんかすごい。そういう人種なのかな?

あちらこちらが擦れてつぎはぎだらけの服と汚れたエプロンをつけている少年─といっても私と同い年ぐらいで、身長は180ないぐらい─は、にっこりと人が良さそうな笑顔で私を見ていた。


「迷子?」

「え、あ…うん。」

「そっか…。探すの手伝おうか?」

え?探してくれるの?マジで?

「困ってるんだろ?」

「まぁ、大分困ってるけど…。」

じゃあ、と言ってその男の子は手を差し伸べてきた。思わずその手と少年の顔を交互にみる。少年はニカッと歯を見せて笑った。もう手をさしのべている少年が天使に見えてきた。


「俺、サンドリヨンって言うんだ。よろしくな!」



この男の子の正体は、かの有名な灰かぶり姫、“シンデレラ”だった。

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