向かいのお兄さん
第17章 だから…
「綾子って…彼氏いんの?」
「ん~、前に別れた。そういう直也は?」
「俺も、そんな感じ」
肌寒い季節だった
どちらもマフラーや手袋をつけて
手をさすりあわせたり、白い息を吐いたりした
「そういえば、もうすぐ大学試験だよね?」
「ああ、まあ…」
「どこ受けるの?」
「…東大」
綾子は目を真ん丸にさせ、プッと吹き出した
「何だよ!?」
「ごっごめん、マジで言ってたのか、冗談かと思って…」
綾子はもう一度フフッと笑うと、頑張れよという意味で俺の腕を叩いた
「…頑張る」
「うん、頑張れ!!」
たかがこれだけの言葉に
救われるようだった