向かいのお兄さん
第17章 だから…
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インターホンの音に、俺は玄関の扉を開けた
「あ…」
「やっほ」
片手に可愛らしい箱を持った、綾子がいた
「余計なお世話かもしれないけど、一次試験合格、おめでと」
箱の中身はケーキだった
普通にイチゴがひとつ乗ったショートケーキを
綾子は机に二つ並べた
「いただきます」
「いただきます」
フォークを使って、ケーキを食べ進める
「うま」
「あたしのバイト先のケーキだから、美味しくて当たり前っ」
「自慢かよ」
ケーキを食べ終えると、綾子は少しため息をついた
そしてこう続けた
「直也、あのね…」
「ん?」
「あたし、留学することにしたの」
「…」
俺はただ、ケーキが乗っていた皿に目を落としただけだった