向かいのお兄さん
第24章 今この時間
そのまま何も喋ることなく、あたしは問題を解いていった
あたしはそこから目を離さなかったから
直也はどこを見ているのか気になったけれど
あまり考えないで、ノートに向き合った
『…』
この問題、前にやった…
公式忘れちゃったな…
何となくページをめくり、昔に解いた答を確認した
『…』
「…あ…」
あたしも直也も、多分おんなじ所に目がいった
赤色の汚い字で
"ここ重要!!"
って書いてあったんだ
「この字…俺の…?」
『…』
あたしは顔を上げて直也を見た
直也は、まるで古いアルバムでも眺めているかのような
どこか遠い目をして
あたしのノートを見ていた