向かいのお兄さん
第35章 彼女
「喧嘩したとか!?」
『…違うよ』
「美咲ちゃんが突っぱねてるわけ!?」
『ちが…』
「なんにせよ、さっさと仲直りして…」
『違うってば!!』
空中を殴りつけるように
グーを止めた
和樹は目を真ん丸にさせて、歪んだあたしの顔を見据える
「え…?」
『違うから…何でもないから…』
何でもないから…って…
言い切れる自信はない
でも
ぐらぐらと不安定であっても
そう信じてないと
あたしが
崩れる
「何でも…ないのか…あ、いや、ごめんね」
『…ううん…あたしこそ…ごめんね』
そう言いながら、遠くにいる直也を
横目で探す
「…本当に何もな…」
「何喋ってんだー?」
突然、ひとりの男が和樹の肩を叩いた