向かいのお兄さん
第35章 彼女
「あ、かっちゃん」
和樹は、かっちゃんという男の方を振り向いた
「よ、美咲ちゃん久しぶり~」
『…』
誰だっけ…
あ、祭の日にちょっとしゃべったことある
「反応鈍いね、何だ忘れられてんのか」
『いやいや、思い出しました、かっちゃんさんですよね!!』
「かっちゃんでいいって。
って言うか、忘れてたってことだよね」
かっちゃん
もちろん、佐藤造花店で働くイケメン労働者のひとりだ
直也みたいに物静かそうなイメージがあるんだけど
どこか大人っぽい(まあ大人だけど)
「で、何しゃべってたんだよ?仕事サボってさー」
そう言いながら、かっちゃんは和樹の肩を組む
「色恋沙汰だよ」
「は?」
かっちゃんは口をぽっかりと開けたまま、
あたしの方に顔を向けた