向かいのお兄さん
第38章 不器用なあんた
『…これ…』
あの時の…
新入生歓迎会の居酒屋で、あたしが直也に介抱(?)してもらってたときの…
「返してよ!!」
乱暴に、携帯はあたしの手から由紀先輩の手へと渡っていく
「貸せ」
しかしそのすぐあとに、直也が携帯を奪い取った
「や…やだぁあ!!」
先輩は直也の服にしがみつきながら
必死に手を伸ばす
しかし空高くに上げられた携帯は、どうにも先輩には届きそうもない
「消却ー」
直也の声と一緒に、軽快で単発な効果音が鳴った
「あ…あ…ぅあああああああ~ん!!」
途端に泣きじゃくる先輩
「今までどうもお世話になりましたー、じゃーなっ」
そんな先輩を笑顔で流すと、直也はあたしの手を引いて
その場を離れた