向かいのお兄さん
第51章 甘い形で示したい
手を洗い終えると、雅也さんがボウルを出してきた
「はいこれ、卵ふたつを入れて、掻き混ぜるべし」
『ラジャー』
言われた通りに卵を入れ、泡立て器で混ぜ始めた
その様子を、雅也さんはじっと見つめてくる
…なんか、本物のパティシエだと思うと、緊張するなぁ…
ちらっとパティシエ様の顔を覗いてみると、その顔は真剣そのもの
『…』
んー…
直也に劣らず男前だよ、ちくしょう
「美咲ちゃん、料理とか全然しないっしょ?」
『え!!?』
勝手に見ていたことを何か言われるのかと思って、肩をびくつかせてしまった
「しーなーいっしょ?」
『はいまぁ…あんましないですね』
「やっぱりねー。
手つきが慣れてない」
クスッと笑いながら、雅也さんはあたしの手を指で弾いた
『いたっ』
「さあさあ、混ぜろー」